作業者は、墜落防止のためにも適切な技術と知識を持ち、安全な作業を行うことが重要となります。
PPEシステムには以下5つの技術に分類することができます。
墜落の危険がある場所に立ち入らないよう作業範囲を制限することです。墜落時に作業者の体重を支えたり、墜落を止める為の技術ではありません。
安定した姿勢で両手を使って作業をするために、ロープやランヤード等を使用して、ユーザーの体重を預ける技術です。ハーネスの両側部または腹部にあるアタッチメントポイントに接続しなければなりません。
墜落時に、作業者に掛かる衝撃荷重を制限するための技術です。
作業者の墜落時にかかる衝撃荷重を、6kN以下に抑えなければなりません。
作業者が墜落時に、障害物との接触や地面への激突を防ぐために必要な空間のことを、クリアランスといいます。
セーフティライン (S)とワーキングライン (W) の2点が固定された状態を保ち、墜落の危険性がない状態で作業を行うシステムです。
ユーザーや他の労働者を救出する時に必要な技術です。要救助者を安全な場所へ搬送するための適切な方法が重要となります。閉鎖空間における作業、スキーリフトやケーブルカーでの救出作業、レスキューキットを使用して行うシステムです。
人体に損傷を与えないように衝撃荷重は、6kN以下とされています。
衝撃荷重 6kNとは、体重100kg の人が重力加速度 6G (1G = 9.81m/s2) で、加速または減速した際に達する値です。例としまして、6mの高さから墜落し、1メートルを有して減速したとき、減速が 6G に達しますが、こちらが身体に与える衝撃荷重の限度値、法律で定められた規定値となります。
落下率は、その墜落がいかに危険であるかを示し、墜落距離を安全装置であるロープの長さ(アンカーポイントから墜落者までのロープの長さ)で割る計算式で求められます。
高所作業を行う場所での墜落は、衝撃荷重が大きくなり、以下のような状況が考えられます。
《 衝撃荷重を吸収し、人体及び器具にかかる負荷を軽減する 》
ヨーロッパ規格で定められている衝撃荷重の上限値は、 6kN 以下に抑えることが決められており、生命の危機を最小限にするために、エネルギーアブソーバーが施されることがあります。
特に落下率を制限することができない場合は、エネルギーアブソーバー等の衝撃吸収機能をもつ以下の3種類が必要となります。
アンカーポイントが、作業者より上の位置にあるため、作業者の胴体にテンションがかかっており、墜落の場合でも落下位置を短距離に抑えます。
フォールアレストシステムとしてダイナミックロープ製ランヤード(EN354)を使用することができるのは、落下率が0.5以下、衝撃荷重が6kN以下の場合に限ります。
アンカーポイントが、墜落時にかかる衝撃荷重を抑えるために、フォールアレストシステムが必要となります。
図解では、作業者の使用しているエネルギーアブソーバー付ランヤード(EN355)の縫製部分が墜落時に裂け、停止時にかかる衝撃荷重を吸収しています。
アンカーポイントが、作業者の足の高さにある場合、フォールアレストシステムは絶対に不可欠となります。
図解では、作業者が墜落した後に、使用しているエネルギーアブソーバー付ランヤード(EN355)が完全に裂けることにより、作業者に掛かる衝撃荷重を吸収しています。
落下率が1を超える場合、人体に掛かる衝撃を吸収するためにもエネルギーアブソーバー付ランヤードが必要不可欠となります。
エネルギーアブソーバーなしで墜落した場合、墜落者は身体に重大なダメージを受ける以外にも、使用している装備の断絶などにより、地面に墜落する危険性があります。
クリアランスとは、墜落時に作業者の安全を保障するために、作業者と地面または障害物との間に最低限確保されるべき空間のことをいいます。
クリアランスの距離は、使用するフォールアレスターの種類によって異なり、次に挙げる支点の位置関係により計算されます。
落下率が1を超える可能性がある足場の組み立てや解体のような特定の作業においても、エネルギーアブソーバー付ランヤードを使用する場合があります。(図1)
高所作業を行う際には、安全確保のためにクリアランスに注意を払い、アンカーポイントから地上まで、必要最低限の距離を絶対に確保しなければいけません。
地上から高所作業場まで向かう際、最初の数メートルを上っている時にはクリアランスの長さが足りません。
クリアランス域に達するまで、推測される落下率は絶対に1を超えてはなりませんので、作業者のハーネスのアタッチメントポイント(EN361)がランヤードのアンカーポイントの高さを超えないようにしなければいけません。(図2)